第5巻 第2号

ページ数 タイトル/著者
107~119 災害初動時における都道府県の機能強化に向けた制度上の課題に関する研究―近年の災害初動対応の経験を踏まえた考察―
室田 哲男、武田 文男
121~128 ムスリムに対する受容的態度、イメージ、脅威認知、国家アイデンティティの関連
松木 祐馬、向井 智哉、近藤 文哉、木村 真利子、金 信遇
129~138 東日本大震災被災地における復興実感度と生活質評価に関する研究―宮城県石巻市の仮設住宅を事例として―
塚田 伸也、森田 哲夫
139~145 高等学校の理科研究活動において現場教員が抱える課題と新たな博士人材の参入についての一考―元大学教員の活用とその組織化―
手島 涼太
147~158 鉄道利用促進に向けたモビリティ・マネジメントの効果と推進体制の検討
大野 悠貴、伊地知 恭右、原 文宏
159~166 新自由主義支持意識とその規定因に関する実証的研究―日本低評価意識と新自由主義化スパイラル―
沼尻 了俊、宮川 愛由、林 幹也、竹村 和久、藤井 聡
167~186 自治体の「適正規模」論の系譜と自治体「分割」への適用の妥当性に関する研究
川端 祐一郎、中尾 聡史
187~197 新聞報道にみる明治から戦前における子供の交通に関する歴史的変遷
中尾 聡史、川嶋 優旗、谷口 綾子
199~211 公共調達制度適正化に関する総合的考察―民間建設企業へのヒアリング調査を踏まえて―
神田 佑亮、宮川 愛由、藤井 聡

掲載趣旨文
文責: 実践政策学エディトリアルボード
石田 東生・藤井 聡・羽鳥 剛史・桑子 敏雄・森栗 茂一・柴山 桂太
(※論文執筆者に含まれる者は、当該趣旨文の文責外である。)

災害初動時における都道府県の機能強化に向けた制度上の課題に関する研究―近年の災害初動対応の経験を踏まえた考察―

室田 哲男、武田 文男

この研究では、災害発生時に、「都道府県」がどのように振舞うべきかを、現状の行政制度、ならびに、過去の災害事例を踏まえた上でとりまとめたものである。災害対応の行政主体は複数階層考えられ、その適切な役割分担を議論するには、本稿での検討を含めた、さらなる、複眼的な考察を行い、それらを総合化していく作業が今後必要となるものと考えられるが、そうした総合的な視点からの適切な制度設計を考える上で、本稿の提言は一定の有用性が確認でき、したがって公的実践貢献性を見出すことができる。ついては、今後の実行政における災害対策の適正化を企図し、本誌にて公表することが適当と判断した。

ムスリムに対する受容的態度、イメージ、脅威認知、国家アイデンティティの関連

松木 祐馬、向井 智哉、近藤 文哉、木村 真利子、金 信遇

政府が「移民」を加速する政策を展開する今日、日本国民の外国人に対する受容性が一体何によって規定されているのかを把握することは、移民政策に伴って必然的に生ずる様々なデメリットを含む諸影響を適正化する公的な取り組みを考える上でも重要な基礎的知見となる。こうした認識の下、この論文ではとりわけムスリムに着目し、「脅威認知」「国家主義」や「多文化主義」が重要な影響を及ぼしている事実を明らかにした。この知見は、ムスリムとの共生が求められる地域があった場合、その共生を円滑化することを目指す実践を行うにあたって有益な知見と期待される。今後、この知見をどのように公的実践に活用するのかを検討し、それに基づく実践が、それが求められる局面において進められることを期待し、本誌での掲載が適当であると判断した。

東日本大震災被災地における復興実感度と生活質評価に関する研究―宮城県石巻市の仮設住宅を事例として―

塚田 伸也、森田 哲夫

東日本大震災で最も被害に大きかった地域の一つである石巻市を対象に、復興実感度と生活質評価に関する意識調査を実施し、住民視点からの現状評価を報告するとともに、因子分析により属性別に復興実感の差を抽出している。広い被災地の中での一地域における調査成果ではあるが、本地域の特性を踏まえた他地域への展開についての考察もしっかりなされていて公的実践として評価できる。また、意識調査結果自体も貴重な成果であり、導かれた知見は今後さらに進展を図るべき復興を考えるうえで重要であることなど共有知性からも評価でき、登載に値する論文である。

高等学校の理科研究活動において現場教員が抱える課題と新たな博士人材の参入についての一考―元大学教員の活用とその組織化―

手島 涼太

本論は、高等学校理科におけるSSHなど探求型授業に関する、外部人材による支援制度を議論したものであり、新指導要領改訂にともなうSSHの充実・展開、科学探求、地歴探求など高校教育での研究活動が喫緊の課題である今日、高校教員、博士号教員、大学教員などの役割、それぞれの課題と限界について、文献とヒアリングにより調査し、知見を的確に丁寧にまとめたうえで、元大学教員の活用を提案したものである。提案を演繹するプロセス、演繹したのちの、その妥当性の検証、実際上の運用等について配慮された提言であり、時宜を得た実践的な政策論文であり、公的実践貢献性が高い。文章表現は平易であり、社会的共有知性も十分確保されている。以上のことから、本論文を掲載することを決定した。

鉄道利用促進に向けたモビリティ・マネジメントの効果と推進体制の検討

大野 悠貴、伊地知 恭右、原 文宏

今、地域のモビリティの向上や地域活性化等の公的目的のために鉄道利用促進が、数多くの地域にて求められる状況となっているが、そんな中で、コミュニケーションを中心とした取り組みを通して鉄道の利用促進を図るMM(モビリティ・マネジメント)の取り組みは、重要なアプローチとなっており、その有効性、ならびに、継続可能性を増進する公的取り組みが強く求められるに至っている。そんな中、この論文では、有効な鉄道利用促進MMの事例を報告するとともに、多様な主体がMMに関わることがMMの継続可能性を増進させるとの知見を明らかにしている。これらの知見の公的実践貢献性が十分に確認できることから、本誌掲載が適当であると判断した。

新自由主義支持意識とその規定因に関する実証的研究―日本低評価意識と新自由主義化スパイラル―

沼尻 了俊、宮川 愛由、林 幹也、竹村 和久、藤井 聡

本論は、新自由主義の根強い支持の構造に関して、単なる社会評論ではなく、科学的に解明を試みた実践的論文である。著者の一人は新自由主義的経済分析の第一人者のひとりであり、その意味でも高度に実践的である。一方で、本論は、既存研究と著者らのこれまでの研究成果に基づいた仮説構築を丁寧におこない、かつ巧妙に設計された質問をもとにWEB調査を実施し、標準的な手法によって客観的に定量的分析を行っている。実践性の高さと、慎重な論理実証は、興味深い共有知性の高い知見を導いている。以上のことから、本論分を掲載することを決定した。

自治体の「適正規模」論の系譜と自治体「分割」への適用の妥当性に関する研究

川端 祐一郎、中尾 聡史

時宜を得たテーマについて、自治体の適正規模に関する既存研究の広範なすぐれたレビューを行ったうえで、入念に考察した論文である。この成果は広く共有すべき知的成果であると評価したい。また単に共有知性に優れているだけでなく、学術的知見を実際の政策課題(本論文では大阪都構想)へ適用する際の注意点・限界点を正確に評価するという方法は、政策を学術的見地から評価するという実践行為の在り方の好例ともいえ、先進的な試みであり、公的実践貢献性からも評価したい。以上のことから、本論分を掲載することを決定した。

新聞報道にみる明治から戦前における子供の交通に関する歴史的変遷

中尾 聡史、川嶋 優旗、谷口 綾子

本論文は、道路上の子供の交通事故についての新聞記述を明治から戦前というこれまであまり焦点が当てられてこなかった時代に焦点をあてて、世論や政策論議がどのように展開されていたかをたどった論文で、内容も興味深く、また、読みやすく完成度も高い。社会的共有知性は非常に高いと判断し、搭載する。

公共調達制度適正化に関する総合的考察―民間建設企業へのヒアリング調査を踏まえて―

神田 佑亮、宮川 愛由、藤井 聡

公共工事の調達方式についての研究である。近年、調達方式がかなり頻繁に変更され、従来からの課題が改善される一方、新たな課題も出現してきているという認識がかなり広く共有されるようになっているが、そのような中、これらの調達方式の影響を大きく受けている一方の当事者である建設業者、中でも各地域を中心に営業しているいわゆる地域建設業者へのヒアリングを行い、調達・契約にかかわる問題点を明確にし、それらの改善提案を行ったものである。ヒアリング結果は興味深く、共有知性は高いと評価できるし、制度提案も具体的であり公的実践性の面からも十分に登載に値すると考える。